研究題目 フィルムとデジタル 編集の創造性と新しい表現方法の研究

研究目的(概要)

映画業界は既にフィルムからデジタル・データへと本格的な移行をおこなっている。特にポストプロダクション部門での変化は著しく、既にフィルムによる映像編集はほとんど行われていない。数々の名作を作り出したフィルム編集の創造性は今、失われつつある。

本研究では、フィルム編集とデジタル編集がもたらす映画創造性の解明と両方の編集特性を生かした新しい映画編集体制、方法論の提唱を行う。フィルムとデジタルの編集思考が融合した編集体制、方法論を作り新しい映画編集の創造性と編集表現を生み出す。研究成果を編集シンポジウムにて報告する。

研究の学術的背景

デジタル技術の劇的な進歩は、映画業界にフィルムからデジタルへの転換を行わせた。今後更なるテクノロジーの進化により、映画=デジタルとなる日もそう遠くはない。しかし、現在多くの映画研究者や制作者はデジタル制作のコスト面での利点やデジタル・データを使用した技術的汎用性とその利便性、デジタルを凌駕するフィルムの画質特性やフィルムに対するある種の懐古主義的な観点でデジタル化が語られる事が少なくない。現在、デジタル化によりもたらされた映画制作の創造性や失ったフィルムの創造性についての研究はほとんど行われていない。映画の使用機材や映画上映の形式はデジタル化された。しかし、映画体制や作り手の創造性、思考はまだ本当の意味でデジタル化はされていない。創造面での真のデジタル化とは、フィルムとデジタル両方の創造性の理解であり、デジタルへの転換期の今こそ、それが必要とされる。

ポストプロダクションの変化

既に撮影、編集、録音などの領域別のデジタル化は、完了したといっても過言ではない。特に、編集とサウンドの部門であるポストプロダクションでのデジタル化は急速に行われた。デジタル・データと親和性の高い合成技術、CG, DIを使用した物語、映像表現が急激に発展し、かつては子供騙しのような映像表現が現在では映画映像表現としての地位を確立するまでになった。デジタル編集ソフトの開発により、以前は特殊技能を必要とした映画編集を誰もが簡単に行えるようにした。ストップモーション効果、スローモーション、画面クロップ、オプティカル作業、編集時のサウンドザインなどフィルムでは莫大な労力と時間がかかった作業がデジタル編集では瞬時に結果を出す事ができるようになった。その結果、編集で画面の構図、画角の変更、色調の調整、編集による“間”の変化などが簡単に行われるようになり、ポストプロダクションの領域は編集演出にとどまらず、映画演出全体に影響を与えるようになった。

デジタルにより、ポストプロダクションが映画に与える影響は大きくなった。これは映画の創造性が変わった事を意味するが、反対にフィルムの創造性は今後さらに失われて行く。今こそ、フィルムからデジタルに移行した事で具体的に何がどう変わったかを検証する必要がある。